CVCファンドマネージャーからスタートアップの1人目の社員に。CFO細川の挑戦。
モノグサに1人目の社員としてジョインした、CFO細川。
リクルートのCVCでファンドマネージャーとして活躍していた彼が、創業間もないモノグサにCFOとして入社した理由とは。
投資側でスタートアップを見てきた細川からみるモノグサとは。
成功はコントロールできない。でも、失敗の仕方はコントロールできる。
---どうしてモノグサに入社したのですか?
竹内(CEO)に誘われたのがきっかけですね。竹内とは前職の同期で長い付き合いで、彼から「起業をする」と聞いて、彼を成功させたいと思ったのはもちろんなのですが、それと同じくらい、「もし事業が失敗したとしても適切に着地させてあげたい」と思いました。失敗した時のことを最初から考えるのか、と少しネガティブに受け止められるかもしれませんが、自分としては必要なことだと考えていて、これはCVCでの経験が大きいと思いますね。
---もう少し詳しく教えてください。
いままで多くのスタートアップに関わらせてもらいましたが、優秀な人達が素晴らしいアイディアとプランを実行したからといって、必ずしもその事業が成功するわけではありませんでした。事業の成否には少なからず運の要素があり、それは人がコントロールしきれないものだと思っています。
一方、失敗に関して言えば、『失敗の仕方はコントロール可能なもの』だと思っています。いざ事業を運営していく中で『目標としていた世界観に到達できない』『約束していた会社の規模にならない』ということは、スタートアップでは起きうることです。大事なのは、その時までにきちんと関係者(サービスの利用者、従業員、出資者など)と信頼関係を作れるか、そして納得してもらえるようなプロセスを踏めているかでしょう。特に資本関係は最初の一歩目が10年後の明暗を分けると言っても過言ではありません。
私が思う本当の失敗というのは、単純に事業がうまくいかないということ以上に、周囲の人からの信頼を失うことだと思っています。たとえ事業が失敗に終わったとしても、信頼が残っていれば再度チャレンジする機会があると思いますし、反対に周囲の人を裏切るような『失敗の仕方』をしてしまうとそのようなチャンスさえ失われてしまいます。
竹内という人間は、モノグサ社での活動に限らず、これからの社会に大きく貢献できる人材だと私は思っています。だからこそ、もし竹内の今回の挑戦が失敗に終わったとしても、それをきっかけに彼が周囲の人から信頼を失うということがあってはならないと思いました。そういった意味で、万が一の場合に『適切に失敗をさせてあげたい』と思ったのです。
もちろん、成功させたいと思っているというのは前提ですよ(笑)
---竹内への信頼が厚いですね。リクルートといえば起業する方が多いイメージがありますが、自分で事業をやってみようとは思いはありませんでしたか?
自分は他人を引っ張って事業運営していくようなタイプではなくて、やりたいことがある人をサポートするタイプの人間かなと思っています。自分は凡人だという自覚があって、竹内や畔柳(CTO)のような、才能ある優秀で人間的にもいい奴を社会に送り出して還元するというのが自分の役割だと思っているので。
社会人1年目が終わったあたりから、その役割への意識というのは強く自分の中にあって、竹内とは違うフィールドの経験を積んで、彼がいつかやりたいと思うことをサポートできるようにと考えていました。竹内の苦手なこと・できないことは自分ができるように、という感じですね。なので、自分でやってみようというよりは、竹内の起業をサポートしようと思ったのは、自分の中では自然なことでしたね。
投資家目線でも、モノグサはおもしろい会社
---今のモノグサのような小規模の会社にCFOがいる、ということはどんな意味を持っていいますか?
さっきの話と重複するのですが、将来に関するいくつかのシナリオを描く中で、あるシナリオとしては、会社の終わりも考えながら経営できているというのが一番大きいのではないかと思います。特に資本は一度入れてもらうと簡単には戻れないので、もし誤った選択をしてしまうとそこから描けるシナリオがぐっと狭くなってしまいます。そういった意味で、最初の資本調達からそこを意識できているのはプラスなんじゃないですかね。
また少し別な観点になりますが、会社が小規模なフェーズは自社にCFOを持たず、外部の専門家に協力してもらいながら資本政策を検討していく、という選択肢もあると思うのですが、そういった役割は内側の人間としてポジションを取って進めるべきだと思いますね。今回、自分自身が資金調達を実行してみて、その思いは強くなりました。
---どうしてそのように思うのですが?
スタートアップの経営者というものは足元の売上が少ない中で、ムーンショットを狙っています。今いる地点と将来の像の間にギャップがある状態です。そのギャップを適切に説明し、理解してもらわないことには出資してもらうことはできません。特に我々のような立ち上がりたてのスタートアップは、プランの不確実性が高い中で出資者に決断をしてもらう必要があります。
そんな時に最終的に見られる(自分がCVC時代に見ていた)のは、そのチームが責任と覚悟をもってそのプランをやりきれるのかという点です。その事業プランの不確実性が高いほど、最後は人を見て信じるものだと思います。その際に資本政策のプランニングをしているメンバーも、経営者と同じように覚悟をもって臨んでいるかというのは当然大事です。外部の立場からサポートをしているという立場だと、どうしてもその覚悟が弱くなってしまうと思うんです。最後は自分が責任を持つので、信じてかけてほしい。と言い切る事ができるのは、やはり、内部にいる人間しかできないと思いますね。
---投資家目線でのお話がありましたが、Monoxerというプロダクトについては一人の投資家としてどう思っていますか?
最初は、どうなるかわからないプロダクトだなと思ってました(笑)。失敗させないように、と思っていたくらいなので。ただ、実際に現場に足を運んでみるようになってから印象は変わってきています。
それはとてもシンプルなのですが、記憶することに困っている人がとても多いということ。そして、Monoxerはそれを手助けできるということですね。なにかを覚えるということは教育領域だけではなく、一般の企業でもニーズがあることがわかってきて、なおかつそのニーズに関してもMonoxerは有効だと確信が持てました。
私の尊敬する起業家・投資家であるピーター・ティールの言葉に『賛成する人がほとんどいない、大切な真実とは?』という有名な問いがあります。最近ではAIという言葉も一般的になり、人間に代わって機械がタスクを処理するプロダクトが増えてきました。機械が人間の代わりに色々なことをやってくれるので、『人間がなにかを記憶する(または覚えている)』という事柄はますます軽視されがちだと思います。ただ、私達は『記憶すること』は人類にとって引き続き大切なこと、これからますます大切になることだと考えていて、それこそが『賛成する人がほとんどいない、大切な真実』だと思っています。そういった投資家の目線で見たときにも、モノグサの事業は面白いなと感じますね。
期待してもらって、その期待に応え続けていきたい。
---最後に、これからモノグサをどういう会社にしたいですか?
たくさんの人から期待してもらえる会社でありたいですし、その期待に応え続けられる会社でありたいですね。私自身のことなのですが、前職を辞めた際に色々な方に挨拶させていただく中で、取引先や人を紹介してくださったり、とても応援してくださる方が多かったんです。これからスタートアップという不安定な環境に飛び込む中で、自分の背中を押してもらえるような期待を感じられて、とてもありがたかったですね。まず自分自身がそういった期待に応え続けられる個人でありたいですし、会社としてもそういった期待を背負って、期待に応えていきたいなと思います。その一つ一つの積み重ねが、大きく描いている未来につながっているのではないかなと思います。