【モノグサPdMシリーズ vol.9】North Star Metricを決めて、みんなで追っかけてみた
はじめに
こんにちは。モノグサ株式会社でVPoPをしている大野です。
今回はMonoxerプロダクトで本年より定めた「North Star Metric」についてお伝えしていきたいと思います。プロダクト指標として非常に重要なNorth Star Metricではありますが、VPoPとして決めるまでの検討過程や社内での取り扱い、それをどのように追っているのかや今後の展望についても記せればと思いますので、モノグサ社員や当社サービスのお客様、モノグサを知らなくてもProduct Managementにご興味持っている方まで、広くお読みいただけると良いものになれば、と思います。
少し長文となっており、細かい話で眠たくなるような部分もあるかもでして、3分で大筋を把握したい方は太字と画像の部分だけ読んでいただいても大丈夫かと思います。
なお、早いもので当シリーズも9回目を迎えました。ここまでProduct Manager陣が弊社プロダクトの開発やそのプロセス、役割などについても発信しておりますので、過去記事が気になる方はこちらにもお立ち寄りくださいませ。
大前提:Monoxerとは?
ご存知の方はこちらの章を読み飛ばしてください。Monoxerとはどのようなサービスであるかを知っていただくと本記事をより理解いただくことができますので、ご存知ない方向けに簡単にご紹介させていただきます。
「Monoxer( ものぐさ )=記憶のプラットフォーム」であり、記憶の定着に注目した「解いて憶える」サービスです。
スマートフォンなどのアプリを通して、「その人が最も効率的に記憶できる 順序 × 頻度 × 多様な問題形式で出題」することで、記憶定着をサポートします。現在、学校や塾、企業を中心に 記憶定着・可視化の仕組みを提供しているサービスです。(いわゆるEdTechという業界のスタートアップです。)
こちらのサイトをご確認いただけるとより理解を深めていただけるのではないかと思いますので、興味ある方・お時間ある方はぜひ覗いてみていただけますとありがたく存じます。
North Star Metricとは?
こちらはご存知ない方もいらっしゃるかと思いますので、改めて。日本語に訳すと「北極星指標」という言葉になるのですが、その意味をこちらの記事より引用させていただきますと
という、KGIやKPIなど様々な指標というものはあれども、その中でNorth Star Metric (以下、「NSM」とも表記します)は「中長期に目指すべき方向の具体化された指標」という重要なものです。
検討のきっかけ
モノグサ社には「無意識のバイアスを自覚する」という行動指針(バリュー)があり、主観的なモノの見方ではなく、客観的事実から物事を分析、意思決定していく(=データドリブン)という文化があります。それもあってか、社内では様々な指標があり、そのデータを効果的に分析・活用することが根付いていました。代表例として、IT学習サービスとして社内的にも重要指標であり対外的にもわかりやすい「学習回数」というデータを開示したりしておりました。
一方で、モノグサはこの累計学習回数のように事業も順調に拡大しておりまして、2024年8月時点では150名を超える社員数となっており、組織としても拡大が継続的に起きている会社でもあります。組織における150人という数字は「ダンバー数」とも言うらしいのですが、一般論として組織の結束力や効率性が低下し始める人数とも言われており、昨年末あたりから私の周りでも深刻なレベルではないものの、一定数の社員が「なぜこの仕事をしているのか」というのを感じる機会が組織拡大の中で以前よりやや薄れてきた感覚を受けておりました。
自分ごととなりますが、10年ほど前のキャリアにおいて、「サービスとして重要な中長期の単一指標を決め、それを社員全員で一丸となって達成目指して日々の業務を行っていく、それによってビジネスとしてもプロダクトとしてもしっかり成長すると同時に、社員への中長期ミッションの浸透・行っている仕事の正しさを確認できる」という素晴らしい仕組みに触れ合える幸運な経験がありまして(当時はまだNSMという概念はあまりありませんでしたが、今思うとそれに近い)、モノグサも非常にミッションを大事にしている会社でもありましたので、North Star Metric となる指標を新たに定義し、それを社員みんなで追うことができたら組織拡大の壁も乗り越えつつ、プロダクトも正しい方向を向きながら、より成長が加速できるのではないか、と思い至ったというのが検討のきっかけです。
検討と結論:モノグサNSM = ( ? )
さて、ではNorth Star Metricを決めよう!と思ったはいいものの、どのような指標とすべきか、という話です。まずは社内で定常的に確認している指標の中でそれに相当するものはないか、という視点で検討しました。
学習者の指標としてDAU(Daily Active Users)、WAU(Weekly Active Users)、MAU(Monthly Active Users)、学習回数、、、などなど
管理者の指標として管理者WAU、チャーンレート、ヘルススコア、 継続率、、、などなど
どれも我々のプロダクトやビジネスを測るKPIとして非常に重要なものです。
我々はIT学習ツールとも呼べるサービスですので、先ほど述べたように、「学習回数」をNSMとしておくのはどうか、と真っ先に考えました。しかし、弊社は「記憶」にフォーカスしたサービスであり、学習回数に比例して記憶定着がなされるものの、「学習はしたが記憶定着はできていない」というケースもありうるということが課題でもありました。例えば、ただ学習回数の達成を目標とするならば、学習者は出される問題について何も考えず何も入力せず回答ボタンを連打すれば、全ての問題に間違っていてもそれも1学習回数になってしまう、というようなケースも想定されますし、プロダクト開発としても学習回数を増やすために、必要以上に学習時間を短くするように仕向ける、簡単な問題ばかり出題するなど、記憶定着としては逆効果になるような施策も是としてしまうリスクもはらむ、というようなものです。
また、NSMは中長期ミッション・目指すべき方向性を具体化する指標であることも大事です。先にあげたように、モノグサ社のミッションは「記憶を日常に。」であり、「記憶が全人類のだれにでも、負荷なく自然に行える活動にする」ことを目指しておりますので、どのような指標が達成されればそのミッションが達成できたと言えるようになるのか、という観点も加えて検討を続け、、、
結果、North Star Metric は「記憶量」とすべき、という結論に至りました。
この記憶量というのは学習者の皆様がMonoxerで記憶した情報の総量です。Monoxerプロダクトは「記憶定着」を通して「記憶を管理」できるサービスであり、その学習者様が何を記憶しているか、ということを記録しています。
記憶量を具体的な例で言うと、Monoxerにて「りんご = apple」という英単語を記憶すると、記憶量が「3」積み上がります。
(なぜ「1」ではないのか、という点や記憶量のベースとなる仕組み、「記憶ノード・エッジ」という概念について説明すると長くなるため今回の記事では割愛しますが、気になる方は弊社CTO畔柳のこちらの記事をご参照ください。)
一人の学習者様にとっての記憶量を最大化する(たくさんのことを記憶できるようになる)こと、全ての学習者様の記憶量の総和を大きくすること、これこそがNorth Star Metric となり、それがユーザ様にとって弊社サービスの真の利用価値でもあり、Monoxerプロダクトが向かう方向性であり、我が社のミッションの道標にもなる指標、となりました。
決めるだけではなく、みんなで追っかける
では、North Star Metricを「記憶量」と決めましたが、その総和を最大化するにはどうすれば良いのか?
「記憶量」は結果指標でもあるため、「記憶量」という指標をさらに因数分解し、構成要素をKPI Treeとしてまとめました。
記憶量は「学習者数」 × 「学習者1人あたりの記憶量」にまず分解されます。さらに「学習者数」は「契約ID数」× 「アクティブ率」に、「学習者1人あたりの記憶量」は 「学習時間」×「記憶効率」に分解されます。この各々の構成要素を最大化することによって、結果指標となる記憶量も最大化されます。
この各々の構成要素を上げるために、(ほぼ)全社員の活動がもとより結びついていたものも多くあります。Salesの皆様は新規/既存のお客様への提案を通してより多くの学習者様にお使いいただくことにつながってますし、Customer Successの皆様も日々のお客様へのサポートや学習につながる導入・運用のお手伝いを通して、学習者様のアクティブ率や学習時間の向上に寄与いただいてるということになります。
プロダクト開発という視点でも、アクティブ率を高めるための自律学習を促す機能開発(最近、学習のリマインダー通知機能がリリースされました!)や、より記憶効率を高めるための記憶メソッド・問題回答形式の改善などを行っており、以前よりお客様の課題解決という目線で行っていた開発・リリースも、それが最終的にミッションにどう接続されるのか、という点が、このKPI Treeによって最終的に記憶量という指標が向上する、その向上がミッション実現に近づくという可視化がされることで、やってきたことの正しさが証明される、ということにもつながっております。
実際にこの話を社内で展開させていただいた際に、少なくない社員の方達から「担当している仕事がどのようにミッションに紐づいているのか、とてもクリアになった!」とのお言葉を頂戴しまして、引き続き社員のモチベーション向上の一助になれればとも思っています。
この記憶量データですが、データはシステムに内包されていたものの、それを見れる形での整形は今までされていませんでした。今回、NSMとしてこのデータを全社で追っかける!という意気込みの相談で、エンジニアの方に頑張っていただき、記憶量データを本年よりダッシュボード上で見れる形にしていただきました。感謝!
さて、なんでもそうですが、何かルールや指標を決めて一度 共有しただけでは、社員全体への浸透というレベルにはなりません。今回のNSMも決めて共有したのは良いのですが、多くの社員にとっては「ふーん」という理解にとどまり、いつかは忘れ去られる可能性が高いものと思っておりました。
今回の このNSMは経営陣にも共感いただき(CEO竹内はこの話をする前から同じように「記憶量」にフォーカスすべきと考えておられた)、2024年度のCompany OKRの1つにこの指標と目標値の達成を明記いただきました。NSM自身は単年だけ追う指標ではなく中長期指標ですので本年だけOKRにセットしてもという部分はありますが、社員全員への浸透という意味合いでは非常に強いインパクトがあります。(一般的なOKRの仕組みはこちらの記事を参照いただければと思いますが、)Company OKRに紐づく各組織のOKRでも記憶量の目標達成・貢献を強く意識・明記いただき、社員一同がNSMを追っかける、という強い組織的取り組みの土台となっております。
また、浸透という意味ではOKRだけでなく社内Slack上で情報発信も行っております。ダッシュボードも非常に良いのですが、全社員が毎日ダッシュボードを見に来るわけでもなく、もう少し無理のない形で、普段確認する情報の中に(SNSのように)このNSMの情報が流れてくるという形ができれば、徐々に理解も浸透も深まってくるかと思い、本年4月以降 毎日(たまにサボるが)情報発信を行っており、そこからまた質問・会話が生まれてくるなど良い浸透効果も出ています。
また、これらのデータ確認で新しくわかってきたこともあります。実際に「記憶量」並びにその構成要素の指標を体系的にデータ取得して半年以上が経過しているのですが、その事実として、「Monoxer学習者は、平均すると1日15分学習を行い、英単語換算で1日20単語を記憶している」ということが数字として判明しました。
これは1年間毎日欠かさず英単語を15分Monoxerで学習すると、7,300英単語を憶えられるという計算になります。あくまで理論値ではありますし、個人差や記憶する情報の違いもあるので目安という数字ではありますが、一般的に高校受験に必要な英単語は2,500語ぐらい、大学受験に必要な英単語は5,000-7,000語程度と言われているため、「(仮)大学受験に必要な英単語数が、Monoxerならば毎日15分を1年継続すれば記憶できる」という利用者にとってもわかりやすい定量化されたサービス価値とも言える可能性があるかと思います。今までもMonoxerは「記憶の近道」「効率的に記憶」「記憶定着をサポート」という定性的な価値を市場に対し訴求しておりましたが、(この数字をそのまま出すかどうかは別として)数字的にも訴求できうるデータが取得できたという副次的効果もありました。
まとめと今後の展望
ここまでの話のまとめ的にもなりますが、上記のスライドは導入前からイメージしていたNSM ”記憶量” を中心とした全社的な好循環の狙いです。ここまでくるともはやプロダクト指標という枠組みを超え、NSMの範囲とは?という話も出てきそうではありますが、一番のポイントはやはり「ユーザ様におけるサービスの利用価値最大化とプロダクトの中長期的な正しい方向性」を導く指標であることだと思っています。
それに加え、「会社のミッション実現の道標」「各職種の仕事のミッション接続」「開発優先順位の判断指標」「わかりやすいサービス価値の定量化」というポイントも合わせて全社的な好循環を作り出していければ、事業も組織もプロダクトも着実な成長を見込めるのではないかと思いますし、引き続きこの好循環を推進していきたい!と考えております。
今後の展望ですが、この”記憶量”を最大化すべく、プロダクトも当然ながら社員一丸となってそれに向かっていくことを継続していきたいと考えております。それに加え、現在この”記憶量”という指標はまだあくまで「社内指標」であり、あまり社外にはデータも出してはいない現状ですが、この”記憶量”という概念は学習者様の真の利用価値を定量化したものにもなりますので、社内の人だけでなく、組織の管理者も学習者の皆様も一緒になってこの記憶(量) 向上に取り組めたら、全員が幸福になれる世界があるのではないか、と個人的には思っており、Next Stepの挑戦としてこれらの概念・データ・仕組みを直接プロダクトにも良い形で反映させられないか、と虎視眈々と企画を推進していこうと考えています。
最後に
今回の記事はここまでです。いかがでしたでしょうか?North Star Metricや弊社のサービスに興味・関心ある方に情報として一助となれば幸いと思います。
もし、記憶のプラットフォームという他では聞かないサービスと会社のミッションに興味・共感いただける方がいらっしゃいましたら、各職種採用中ですので、ぜひご検討くださいませ。もちろんProduct Managerポジションも絶賛募集中ですので、是非採用サイトからご連絡ください👍