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これまでのキャリアとそこからみえたスタートアップ法務のいいところ(前編)

モノグサの法務担当です。契約業務を中心に、事業や会社の仕組みづくりにかかわる色々な法務業務に携わらせてもらっています。今回は、これまでのキャリアのお話と、そこから見えてきたスタートアップ法務のいいところについてを前編と後編の2回に分けてお話したいと思います。

自分のキャリアの話をこんな公の場でお話するのはかなり恥ずかしいのですが、私のキャリアが事業会社の法務としてはあまり一般的ではないようなので、以前の別記事からもう少し深堀りをして、法務の中にはこんな人もいるよというご紹介をさせてください。


これまでのキャリアの話:事業会社法務になるまで

法務として働く方の中には、会社の配属や異動で法務部に入るケースと、弁護士さんで弁護士事務所から企業の法務部に転職するまたは新卒で入社するケースが多いようです。私の場合はどちらでもなく、他の仕事をした後に未経験で事業会社の法務に転職しました。

私のキャリアのスタートは弁護士事務所の弁護士秘書職でした。元々大学の法学部在学中に国際協力に興味をもったことがきっかけで、大学院では自分のバックグラウンドである法律×国際協力として海外への法整備支援を学んでいました。特にベトナムをフィールドとして、ベトナムの戸籍法を中心に研究をしていました。卒業後も何かしらそのような活動に関係したいという理由で、法整備支援の活動も行っている弁護士事務所へ入所しました。その事務所は大手の事務所でしたが、法律事務を専門とするいわゆるパラリーガル職という採用枠がなく、弁護士秘書が法律事務〜秘書業務すべてに対応していました。そのため、弁護士資格がなくても、何かここでしかできない経験があるかもしれないと思ったことと、ベトナムでの研修経験をお持ちの弁護士さんが在籍されていたことでベトナム関連の相談も多く、大学院での経験が何か活かせるかもしれないと思ったことが入所の動機でした。
(と書くと、なんだかすごく真面目に聞こえますが、こっそりお話をすると、大学院での研究をとおして自分の知らない世界を「知る」ことの大切さを学んだことから、ドキュメンタリーなどをつくってみたいと思い、実はマスコミや制作会社を中心に就活をしていました。ただ時は就職氷河期、そちらはことごとく落ちまくり・・・ちょっと目線を変えて弁護士事務所を受けたところ、ありがたいことに採用してもらえたという感じです。結果的にはこれが今のキャリアに繋がっているのでよかった!!)

弁護士事務所では弁護士さんの秘書として、スケジュール調整等の秘書業務に加え、訴訟事務や法令調査といったパラリーガルの仕事や、たまにベトナム語の翻訳などもしていました。担当した弁護士さんは、みなさん主に企業法務といって企業からのご相談に乗る仕事をされていましたが、刑事事件、破産事件、相続や離婚等の家事事件を担当されることもありました。裁判書面の準備や提出で裁判所にも頻繁に通いましたし、ご相談案件から様々な人生ドラマを垣間見ることもあり、一般的にはなかなかできない経験をさせてもらいました。その中で、自分自身も手に職をつけたいと思うようになり、現実的に手が届きそうで、かつビザのサポート等大学院での経験を活かせそうな行政書士の資格を取りました。(このときMonoxerがあれば!もっと苦しみなく取れていたはず!)

ちょうど資格をとった頃のタイミングで、家族の転勤でタイのバンコクへ移ることになりました。学生の頃から海外で働いてみたいと思っていたので、これは良い機会!と、弁護士事務所を退職してバンコクにある法律・会計のコンサルティング会社で1年間インターンとして働くことにしました。

その会社は、タイ人の弁護士や会計士を中心に主にタイへ進出する日系企業向けにサービスを展開しており、タイ人スタッフと日本人顧客との仲介役が必要だったため、その仲介役が私の主な業務でした。具体的には、顧客とのやり取り、タスク管理、現地の投資制度・労働法・会社法に関する法令調査、顧客のビザサポート、翻訳などをしていました。日本と比べてのんびりとした空気があったので、日本人のお客様に満足していただくためには納期管理がかなり重要なミッションでした。常にタイ人の同僚にタスクの進捗確認をしていたため、うるさい日本人だったと思いますが、皆いやな顔せずにOK!マイペンライ(だいじょうぶ)!と接してくれていました(実際は全然大丈夫でないことも多々あった。笑)。ビザサポートでは、お客様の労働許可の申請に同行し、必要書類について都度言うことの変わるお役人さんに翻弄されながら、窓口のお役人さんと戦ってくれているタイ人の同僚に加勢しつつ、お客様に事情を説明するということもやっていました。入国ビザによっては、期限内に労働許可がおりなければ赴任後であっても一度タイから出国しなければいけない場合もあり、役所の采配次第で自分達ではコントロールしきれない仕事にかなりドキドキさせられました。

1年間のインターンを終えて帰国し、改めて日本で働くぞとなったとき、次のキャリアをどうするか大いに悩みました。というのも、当初の予定では、帰国後は資格を活かして行政書士事務所等で働こうと思っていたのですが、タイで直接事業会社のお客様と接する中で、みなさんが異国の地で頑張って事業をされている姿を目にし、私も自分事として直接何かの事業に関わってみたいと思うようになったことが理由でした。そこで思い出したのが、弁護士事務所時代に事業会社法務へ転職された秘書の先輩のことでした。転職後の先輩がとても溌剌と、自分の会社はこんなことをやっている!と楽しそうにお話をされていた記憶が蘇ってきました。行政書士としてのキャリアと事業会社法務としてのキャリア、どちらを選択するかとても悩んだのですが、やはり事業会社への思いが強くなったことと、法務へ未経験で飛び込むのは年齢的にもこのタイミングしかないと思ったことから、事業会社法務の道に進むことにしました。

これまでのキャリアの話:事業会社法務になってから

事業会社法務としてのスタートは、不動産関連会社の法務部でした。そこでは、グループ全体の契約審査、法務相談、訴訟対応などの事業法務を中心に担当しました。プライム上場企業だったため、株主総会の準備は会社にとっての一大イベントで、総会関連の業務も毎年経験させてもらいました。その他事業法務に加え、国内外の企業との交渉を含む商標業務やグループ会社再編の手続きなども行いました。はじめてのことばかりでしたが、一つ一つが知識と経験として積みあがり、徐々に契約審査にも法務相談にも一人で自信を持って対応できるようになったり、社内の方から直接指名を受けて相談していただけることがとても楽しく、やりがいを感じました。特に、法務相談を受けた際に、相談者のお話から案件の構成を正しく読み解くために丁寧にヒアリング→どうすれば相談者のやりたいことを最大化しつつ法的リスクを最小化できるかを検討→結果が事業に反映されるという工程が面白く、このまま事業会社法務としてキャリアを続けていきたいと思うようになりました。

その中で、特に商標業務が面白く知財分野に興味をもったことと、コロナ禍を通して働き方を見直したいと思ったことをきっかけに、いわゆるディープテックと呼ばれる社員40名規模のスタートアップに法務として入社しました。その会社には法務を単体で扱う組織はなく、知財をメインに扱う部署で法務業務も担っていました。私の具体的な業務としては、はじめは主に契約審査、法務相談、新規事業の関連法令調査などの事業法務を中心に、社内のルールづくりや上場準備としての社内規程整備を担当していました。後半は資金調達に関連する契約レビューやリスクの整理、株主総会・取締役会に関連するガバナンス法務にも携わっていました。残念ながら、この会社は解散することになってしまったのですが、自分の会社の解散決議にかかわる業務をするという法務としては貴重な経験をさせてもらいました。
会社の解散にあたり転職活動をしたわけですが、転職先として、私は迷わずスタートアップを希望しました。大企業にもスタートアップにもそれぞれの良さがありますが、私はスタートアップ法務の良さは「事業を自分事化できること」「会社の横縦すべてと関われること」「専門職でありながら汎用性の高いキャリア形成ができること」だと思っています。

キャリアの話だけで長くなってしまったので、今回はこのあたりで終わり、次回はこの3つのスタートアップ法務の良さについて具体的にお話していきたいと思います。