CDシンポジウム登壇レポート:ウクライナ人が語る多文化共生
こんにちは。モノグサで広報インターンをしている、ウクライナ出身留学生のマックスです。
私は8月27日から29日にかけて開催された、一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会(TC協会)主催のコミュニケーションデザインシンポジウム(CDシンポジウム)に登壇しました。そこで「海外人材が直面する日本語の壁 ~違うのが当たり前な多文化共生~」というテーマのセッションに参加しました。お話しした内容を、こちらの記事にまとめました。
はじめに
CDシンポジウムとは?
CDシンポジウムを主催しているTC協会は、「製品やサービスの使用説明を扱う専門家の団体」です。使用説明書の品質改善などを通じてテクニカルライティング技術の普及や研究、情報共有を促進しています。1989年から毎年変わる「テーマ」に基づいて、マニュアル作成から多文化共生に至るまでの様々な講演が行われるシンポジウムを開催しています。
CDシンポジウムの詳細は以下のリンクでご覧いただけます↓
今年のテーマは『How do you 伝?』で、効果的なコミュニケーションに関する講演が行われました。その中には私も参加した「海外人材が直面する日本語の壁 ~違うのが当たり前な多文化共生~」というトークセッションがありました。
セッションの詳細はこちら↓
なぜ私がそこに?
モノグサは自社で開発提供している記憶のプラットフォーム「Monoxer」を活用して、2022年から日本に避難してきたウクライナ避難民向けの日本語学習支援を行っています。私はその取り組みを担当してきました。
2年にわたって、弊社のアプリで使用できる多くの日本語学習教材を提供してきました。その結果、日本語能力試験(JLPT)のN5~N1(初級から上級)まで幅広い学習コンテンツを開発できました。
また、この教材は500人以上のウクライナ避難民に届けることもできて、実施していた日本語能力試験対策クラスによって現時点で28名が試験に合格しています。
モノグサのウクライナ避難民に向けた日本語学習支援の取り組みはメディアでも紹介いただいています↓
また、私が執筆した記事でも支援プロジェクトの仕組みを詳しく説明しています↓
私がトークセッションに登壇するきっかけは、企画を担当していたアベイズム株式会社の楠山さんの推薦です。楠山さんは、弊社が出展していた展示会でブースにお越しいただいて、講演への参加を提案してくださいました。
私は、このような場で自分の経験を共有できることを嬉しく思い、参加させていただくことにしました。
講演時にお話したこと
いただいた講演の構成では私のパートは後半でした。最初に、長年にわたって企業向けに海外人材に関するコンサルティングを行っている内定ブリッジ株式会社 CEOの淺海一郎さんの話を聞かせていただきました。
後ほど淺海さんのスピーチに関する感想を詳しく述べますが、一言で言うと、具体的な話が多く、淺海さんの豊富な経験が感じられる素晴らしい話でした。
淺海さんの次は私のパートでした。私が話した内容を以下にまとめます。
日本の言語や文化の特徴は、ハイコンテクストだということ
「ハイコンテクスト」とは、何かを伝える際に、言語そのものに含まれる情報が限定的で、実際の意味が文脈や背景知識に大きく依存していることを指します。伝えたい内容の多くが、言葉以外の暗黙の了解や状況の共有によって補完されるため、受け手がその文脈を理解しているかどうかによって、伝わり方が大きく異なります。
ハイコンテクストは5つのポイントから構成されていると思います。
①背景知識と共通理解の重要性
それぞれの国の人は、それぞれの国で違う学校に通い、違う音楽を聴き、違う歴史を学んでいます。日本の場合は、島国であるため、近い背景知識を持っているという要素も強いと思います。たとえば自分の経験では、パーティーで「山手線ゲームをやろう!」という話になって、何のことかわかりませんでした。
日本人にとっては当たり前の知識かもしれませんが、外国から来た私には「山手線」はピンとくるものではありませんでした。
②暗黙の了解と間接表現
たとえば、日本では誰かの誘いを断るときに「いけたら行く」とやんわり伝えるのが一般的に感じますが、海外でははっきり「行けない」と言わないと相手に伝わらないことがあります。
③非言語コミュニケーションの重視
わかりやすい例は、人の話を聞く時に頷くことです。日本では相手の話を聞くときに頷いて、「わかっている」ことを伝えるのが一般的ですが、他の国ではそれを行わない文化もあります。
④文脈に依存した意味と⑤敬語と人間関係
日本語では、英語での「You」のようには「あなた」とは言わないものです。苗字か、下の名前か、「さん」を付けるか付けないか、などは文脈に依存するし、最後のポイントの「敬語と人間関係」もそうだが、人間関係の情報がこれほど反映される言語は他にはあまりなく、そのため、日本語を苦手とする外国人も多いと感じます。
ハイコンテクスト文化における相互理解のためにできること
上のことを踏まえて、日本語自体を学ぶのはそこまで難しくないと思いますが、教科書に書かれていないことや知らないことが多くあります。
外国人がそれを勉強するには試行錯誤するしかないと思います。
そのため、日本に馴染むには時間がかかることが多いです。これを日本人の方に理解してもらいたいと思います。もちろん、当然ながら外国人側の努力も必要で、お互いに成長できる環境を作ることが重要です。違う知識を持った人同士が接すると困難も生まれるが、違う視点や観点を与えてくれる可能性もあります。
また、国籍に関わらずその人の性格も大事な要素であると強くお伝えしたいと思います。「ウクライナ人」「日本人」などではなくその人の性格に注意を払えば、良い関係を作れるのではないでしょうか。
シンポジウムの感想と振り返り
シンポジウムに参加してよかったと思います。
一緒に登壇した淺海さんのスピーチを聞けたのは非常に貴重な機会になりました。やはり、自分は海外の人の視点から日本を見ているし、雇っている側の苦しみや悩みについて考える機会はあまりないです。淺海さんのプレゼンテーションは、そのような面も知るいい機会になりました。
また、自分の経験を振り返る機会にもなりました。
私は日本に住んで比較的短い(約2年間)のですが、早く日本に馴染めたので、いつの間にかハイコンテクスト文化の一員になっていたと感じています。2年も経つと、来日した当初のことは忘れてしまいます。なので、今回の講演はそれを思い出す、少し感慨深い機会となりました。
講演後に配信していたアンケートの結果は、基本的に好意的でした。「淺海さんの貴重な情報に加えてマックスの体験的な話が良かった。」というコメントもいただき、感動しています。
また、「今回のセッションは問題提起であり、今後の講演では解決についても議論して欲しい」という声もいただいています。私もこの意見に同感できまして、今後の機会があれば、もう少し具体的な話もできればと思いました。
改めまして、企画に関わった方々に感謝しております。
モノグサ株式会社では一緒に働く仲間を募集しています。
少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひお話しましょう!