
これまでのキャリアとそこからみえたスタートアップ法務のいいところ(後編)
モノグサの法務担当です。前回から引き続き、これまでのキャリアのお話と、そこから見えてきたスタートアップ法務のいいところについてご紹介させてください。前回は私のこれまでのキャリアのお話を中心にさせていただきましたが、今回は私が考えるスタートアップ法務の良さである「事業を自分事化できること」「会社の横縦すべてと関われること」「専門職でありながら汎用性の高いキャリア形成ができること」についてお話できればと思います。
スタートアップ法務のいいところ:事業を自分事化できる
法務という仕事は、普段直接お客様と接することがなく、売上のKPIが設定されることもないため、自分と事業とのかかわりが見えづらくなる側面があります。大企業にいると、一つ一つの契約審査がどれほど会社の売り上げや成長に貢献しているのかなど、なかなか意識しづらいと思います。一方でスタートアップの場合は、事業の小さな一つ一つが会社全体へインパクトを与えることから、個々の契約審査や法務相談についても直接事業へ影響すると実感しやすく、事業を自分事化して捉えやすくなると感じています。一つの契約審査が、事業だけでなく会社そのものの継続性に影響を及ぼす可能性もあるため、より当事者意識を持つようになります。私は自分も事業にかかわってみたいと思って事業会社法務になったため、特にこの点がスタートアップで働いていてとても楽しいと思うポイントです。
スタートアップ法務のいいところ:会社の縦横すべてと関われる
大企業の法務では部内で一般的に分業制がとられるため、法務の仕事をする中で、どうしても全く関わることがない部署が出てきます。それに対してスタートアップでは、人数が少なく細かい分業ができないことから、法務メンバー全員が会社で発生するほぼすべての法務業務に携わることになり、すべての部署と関わって仕事をすることができます。また、経営陣との距離も近く、日頃から直接業務内容を共有することも多いです。会社として意思決定してほしいトピックがあるときには、直接経営陣と対話することもあるため、部署間の横の繋がりだけでなく、社内の縦の繋がりも非常に強いと感じています。一法務部員が直接社長と業務について会話することは大企業ではあまり考えられないため、会社の縦横すべてと関わることができることは、スタートアップならではの良さではないかと思います。
スタートアップ法務のいいところ:専門職でありながら汎用性の高いキャリア形成ができる
法務は、大企業・スタートアップにかかわらず、一般的には専門職といわれる職種になります。業務を通して専門知識が身に付き、未経験からでも経験を重ねていくことで着実にステップアップできます(食いっぱぐれの心配もあまりありません。笑)。事業会社法務の場合、採用や昇進に法律関係の資格の有無が重要視されることはあまりない印象で、資格よりも、パーソナリティや資質が重要であるように思います。スタートアップの場合、一つの分野に特化した専門性を追求するというよりも、法務の業務を全体的に幅広く網羅して経験することができることから、いわゆる事業法務・ガバナンス法務の双方に対応できる力が身に付きます。また、スタートアップでは、事業サイドから「こんなことをやりたい!」と法務相談をうけたときに、四角四面に白黒をはっきりさせて「これはNGです」と言い切ると、これから伸ばさなければいけない事業にブレーキをかけてしまうため、絶対にダメなポイントを押さえつつ、どうすれば法的リスクなくやりたいことを最大化できるかといった観点で仕事をすることが大切です。このスキルは会社の規模や職種にかかわらず、どのような仕事でも活きる大切なポイントで、この経験もキャリア形成に良い影響を与えると感じています。このように、スタートアップ法務は、スキルという点でも、経験値という点でも、比較的汎用性の高い専門職キャリアが形成でき、これも大きな良さの一つだと考えています。
私がモノグサに入社してからはまだ日が浅いですが、上で挙げた3つはすべてモノグサでの仕事にも当てはまっています。事業については、入社以前からモノグサの事業って面白そう!息子にもぜひ使ってほしい!と思って応募したため、事業への共感や自分事化の度合いは当初から高かったのですが、普段からBizやDevなど様々な部署と仕事をさせていただいたり、隔週でCFOと1on1でお話する機会があるなど、縦横の繋がりも日々実感しているところです。また、契約審査や法務相談を通した事業法務と、取締役会、株主総会などの会議体の運営や社内のリスク体制整備といったガバナンス法務との双方を経験できており、まさにスタートアップ法務の良いところを実感しながら日々仕事をさせてもらっています。
今回は2回にわたり私のキャリアとそこから見えたスタートアップ法務の良さをご紹介しました。私の場合、はじめから法律と全く関係がないキャリアだったというわけではありませんが、前回も少しふれたとおり、事業会社法務では法律資格が重要視されることはあまりありません。知識は順次増やせばよいものですし、それよりも相談者と丁寧にコミュニケーションを取れるか、事業を尊重して会社全体の最適解のために動けるかといったパーソナリティや資質の方が大切です。他のキャリアで培った経験や考え方は必ず生きると思いますので、今回の記事を通して「法務部で働いたことはなかったけど、ちょっとやってみようかな」「こんな人がいるなら自分もできるかも」と思ってくださる方が少しでもいらっしゃったらありがたいです。
モノグサの法務メンバーは、会社の規模にしても、業務内容にしても、色々な経験をしてきていますので、もし少しでもスタートアップの法務の仕事にご興味をお持ちの方がいらっしゃれば、いつでも気軽にお問合せください!みなさまとお話できる日を楽しみにしています!!