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一人法務を卒業した筆者による一人法務の振り返り【入社後版】

こんにちは。モノグサ株式会社で法務を担当している良知と申します。今回は第2回として、当社に一人目法務として入社した後の振り返りをしていきたいと思います。


入社後、一人法務で苦労したこと

ある程度覚悟して入社をしたのですが、やはり苦労したことはありました。その中で私が特に苦労した点を4つご紹介していこうと思います。

その1:気軽に業務の相談をできる人がいない

当社の場合、法務のバックグラウンドを持った人第一号=私だったこともあり、気軽に法務の相談をできる人がいなかったことです。

法令や契約書の解釈について、自分の理解が間違っていないか確認したくなることはありませんか?または、複雑なご相談をいただいた際、壁打ち役が欲しくなる時はありませんか?そんな時、一人法務だと気軽に確認ができる人が周りにいないことが多いです。

当社の場合、顧問の弁護士さんはいらっしゃったのですが、先生方の日程を押さえ、予算も考慮して相談ということになるので、気軽に相談というわけにはいかなかったのです。

その2:プレッシャーとの戦い

一人法務かつ気軽に業務の相談をできる人がいないので、自分の判断ミスがそのまま会社のミスに直結してしまうというプレッシャーと戦うことになります。

もちろん、複雑な案件や影響が大きな案件については、事業部の皆さんと調整し、顧問の弁護士さんと確認しますが、毎回時間をもらえるわけではありません(さらに、予算も必要になりますし)。

その3:法務業務の評価基準がない

法務のバックグラウンドを持った人第一号ということは、法務という職種を評価する基準もありませんでした。

評価基準がないと、評価基準が主観的なものになってしまいますし、今後メンバーを採用し、チームを作っていくとしても大きな障害となってきます。そこで、他の組織向けの評価基準を参考に、法務の評価基準を作成する必要がありました。

その4:休みが取りにくい

休みが取りにくいということも苦労した点です。何せ一人なので、休みを取ると、その間に溜まった業務を休み明けに自分で対応する必要が出てきます。

とはいえ、人間には休養が必要ということで、どうしたら休んでもあまり業務に影響が出ないか、改めて考えることになりました。

苦労の解消策について

では、私は上記の苦労をどのように解消したのか、それを共有させていただきます。

その1:業務の相談相手を作る

この1つ目が一番苦労したなというのが本音で、正直一人法務を卒業するまで、完全には解決できませんでした。

ただ、何もしていなかったわけではなく、以下のような工夫をしていました。

  1. 顧問の弁護士さんと相談し、会社のコミュニケーションツール上に招待をし、どうしても急ぎ対応しなければならない複雑な案件について、コミュニケーションツール上で相談したり、MTGの依頼をしたりできるように調整

  2. 複雑な案件の場合、事業部門とのコミュニケーションを密にし、事業部門のやりたいこと、なぜそれをやりたいのか背景の確認を綿密にすることにより、法務として検討するべきことを明確化することに努める

その2:プレッシャーとの戦いに打ち勝つ

この2つ目にも苦戦しましたが、上に書いた事業部とのコミュニケーションを密にした結果、プレッシャーを徐々に減らすことができました。

一人法務かつ入社したばかりの頃は、事業のこともよくわからず、事業を含む会社のことを知りたくても皆さん忙しそうなのもあって、気軽に相談ができる人がすぐにはできなかったのですが、複雑なご相談を受け、それを何とか正しく理解したいと取り組んだ結果、事業への理解が進むと共に、少しずつ同僚への理解も進んでくるようになりました。

その結果、法務として判断するために必要な情報がきちっと集まる、その状態で弁護士に相談ができるので深く議論ができる、深く議論した結果、事業側の希望通りにビジネスが進められるという流れ=同僚との間の信頼貯金が少しずつ溜まっていくと同時に、プレッシャーも徐々に減ってきたように感じます。

もちろん、ミスはしてはいけないのですが、信頼貯金が貯まってくると、万一ミスをしてもお互い助け合えるという心理的安全性が高まるので、結果プレッシャーが減るのではと個人的には考えています。

その3:評価基準を作る

当社の場合、幸運にも全社共通の等級要件が定められていましたので、そちらを参考にすることができました。

例えば、ジュニアレベルの場合、以下の基準が設けられています。

能力:
自分の仕事に責任をもって取り組み、指示・指導を受けながら、任された仕事は最後までやり抜く(適切な手助けがあれば大抵の業務を遂行できる)

これを法務職に置き換えるとどうなるだろうと考え、以下のようにまとめました。

能力:
①民法などの基本法や、著作権や個人情報保護法などの業務に関連する法令について、自ら読み込むことができ、上長または同僚のサポートを得たうえで正しく内容が理解でき、その内容を事業部に正しく伝えられる
②書面のレビュー力:①NDAなど難易度の低い書面や②業務委託契約など頻度高く利用する書面について、自ら読み込むことができ、上長や同僚のサポートを得たうえで正しく内容が理解でき、その結果を事業部に正しく伝えられる

私は、複数回転職しており、様々な組織で様々な上司、同僚、部下の方と一緒にお仕事をさせていただいたので、その時の経験から、多少複雑な書面であっても単独でレビューできたらミドルレベル、簡単な書面の作成が一人でできるようになったらシニアレベルかなと各等級の役割について段階ごとに説明ができたので、あまり時間をかけずに上長や人事からの承認を得られたように思います。
皆さんも、ご自身の職務等級が上がった際に、どのような理由で等級が上がったのかまたは上長が役員からどのような能力を評価されているか考える癖をつけておくと、自分が評価基準を作る、評価をする際に合理的な説明ができるので、もしよかったら試してみてください。

その4:休みの取り方を考える

できる限り、自身の業務を効率化することは前提になりますが、さらに休みを取りやすくするために以下のような対策を取ってきました。

  1. 繁忙期を避ける:法務は他部署からのご相談が業務につながることが多いので、業務の多寡を自分でコントロールすることが難しい部署だと思っています。なので、会社の繁忙期を把握するのは大事な要素になります

  2. 予め休みを取ることを主な依頼先に伝えておく:いついつ休みを取る予定なので、急ぎの案件があれば早めに相談してほしいとお伝えしておくと、事前に相談してくれたり、ご相談の頭出しをしてくれることで休み明けの業務を減らす効果があります。

  3. みんなが休む日に休む:GWや年末年始など、全社的に稼働率が低い日は他部署からのご相談も減るという当たり前のことなのですが、効果はとても高いと思います。

  4. 休んだ日を全力で楽しむ!:上記のような努力をしても、繁忙期にどうしても休みたいイベントがある時もあります! そうなったら周りにちゃんと伝えたうえで、お休みをもらいましょう。そして、全力で楽しみましょう! 自分の経験上、全力で楽しむことで、その後の困難も乗り越えやすくなります。加えて、忙しい時に同僚が休んだら全力でサポートしてあげてください。そうすれば、チームの結束も高まりますし、大事な時に休むと言いやすい持続性の高い組織になってもいきますので。

まとめ

一通り苦労したことを書ききれたので、今回はここまでにしたいと思います。
改めて振り返ってみると、その時は苦労したことでも、一度経験したからか、今ならもっとうまく対処できそうだと思っている自分に気が付きました。
次回は一人法務を卒業することになった経緯や採用時の苦労について、書いてみようと思います。
読んでいただきありがとうございました。