Monoxer 自社リブランディングの裏側:社員の力を合わせて見つけたモノグサの新しい「価値」
モノグサ株式会社DesignerのWangです。
この度、モノグサはリブランディングを実施し、2022年2月からロゴやプロダクトデザイン、タグライン等が新しくなりました。
2021年2月から約1年をかけた大型プロジェクト。組織をより拡大していく今だからこそ、改めて自分たちのメッセージを見直し、Monoxerのブランドを構築していきました。リニューアルしたデザインやタグライン『ようこそ、記憶の近道へ。』に込められた想いと完成までの舞台裏ストーリーを紹介します。(編集:南野、moyo)
リブランディングの成果、新しいMonoxerの誕生
まずはリニューアルしたロゴや名刺、封筒、ガイドラインなどをご覧ください!印刷しやすさ、ムラのないように白背景での利用を想定し、青ロゴの仕様を基本としました。また、ロゴの展開性を鑑みて模様を作りました。
展示会ではこのリブランディングを活かし、ブランドの認知アップにつながるようにデザインしました。多くのお客様にお立ち寄りいただくきっかけになり、いろいろな方から評価をいただきました。詳しくはこちらの【展示会出展のウラガワ】をご一読ください!
第1編 リブランディングのきっかけ
日本語の誤解をきっかけに、社外への”伝わりにくさ”に深い課題を感じる
私は2021年1月に、当時社員数20名程度のモノグサ株式会社に入社しました。日本語の誤解...というと恥ずかしいですが、最初はMonoxer(モノグサ)は動物の「なまけもの」を意味する言葉で、言葉の意味がそのままロゴのモチーフになっていると思っていました。また、「記憶を日常に。」という会社のミッションから、記憶の負荷を減らす、日常で気楽にできるようにしたいというニュアンスも掴め、BI(Branding Identity)、VI(Visual Identity)ともに特に疑問を持ちませんでした。
しかし、お客様と接点があるプロジェクト(展示会やLPなど)をいくつか担当したところ「モノグサといえばこれ」という印象に残る強いメッセージが決まっていないことに気づきました。実際、どれを優先的に用いてデザインするべきか悩むことも多かったです。
また、プロジェクトの連携で社外のコピーライターやデザイナーに、社名の「Monoxer」、ナマケモノのロゴ、「記憶を日常に。」について説明すると、皆さんからたくさんの質問が返ってきました。
自分の持っていた違和感が証明されたと同時に、彼らの質問は衝撃的でした。
せっかく会社が素晴らしい理念を持っているのに説明しないと伝わらないことは非常にもったいないと思い、リブランディング(BIとVIの整理、再定義)が必要だと強く感じました。
1冊の本から始まったリブランディング、組織拡大に向けての必要性を社内に周知
サービスをこれから展開していく上で、デザインの根本であるブランディングが必要だと感じ、すぐに社内のもう1人のDesigner moyoさんに相談しました。彼女も、これから組織として拡大していく段階だからこそ、モノグサ社員間の共通認識を持つ必要性も高まっていると賛成してくれました。
しかし、他の職種は判断の優先順位が違います。まずは、ボードメンバーにブランディングの重要性とメリットをどのように伝えたら良いかと苦悩しました。
そこで思い出したのが、私が以前ニューヨークに留学した際に共感した『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいことー小山田育/渡邊デルーカ瞳』という本です。
デザイン専門外の方にもわかりやすい内容で、ブランディングのプロセスが詳しく説明されています。思わず、ボードメンバーにこの本を読んで欲しいと勧めました(笑)
slackで「来週持っていきます」といったところ、ボードメンバーからはすぐに「買いました!」と返事が来て、感動しました。本によって専門性を重視したみんなの理解もあったことで、ブランディングのプロジェクトは順調に始められました。
モノグサにおけるブランディングとは? 社内Brand DNA workshopを全7回開催
私はブランドデザインの経験はありますが、リブランディングをリードするのは初めてでした。本に書かれた著者の素晴らしい経験を参考に、2021年2月〜7月の期間で全7回、モノグサ社内でBrand DNA workshopを開催しました。モノグサらしさ、BIとVIの土台になる情報を引き出すことを目的に、異なる観点を集めるため、CTO畔柳、CFO細川、PR中村、HR杉山、Designer moyo、一部セールスの方にも参加してもらい、よりユーザーに近い情報を集めました。
情報を引き出すためにQ&A形式を導入
ボードメンバーも他職種の方も参加するので、workshopができる時間は限られており、週1回1時間だけで、みんなの意見と考えを引き出すことに必死でした。
いざworkshopが始まり、「モノグサのグランドストーリ、ビジョンは何ですか?」と聞いても、誰も発言しません。参加メンバーはブランディングについて考えることが初めての人ばかりなので、自由議論は難しかったのかもしれないと思い、途中で私が質問しながら少しずつ話を引き出す形式に変えてみました。すると、メンバーたちは質問に答えながらそれ以外に思いついたことも話し始め、自然と次の話題にも繋がっていきました。良い情報が得られる会話ができるようになりとてもよかったと思います。
モノグサへの理解を深めた先に見えてきた新しいBIとVI
workshopを通して、私自身のモノグサへの理解も深まりましたし、参加メンバーそれぞれのモノグサに対する思いや考え方を交流させることもできました。それらは次の段階であるBIとVIの再定義にとても重要な情報でもあり、土台にもなっていきました。
第2編 Branding Identityの再定義
モノグサの理念を伝えるために、既存項目のリライトと新しい項目の追加を提案
当時、モノグサにはMissionとValueだけが存在していました。workshopで理解を深めるなかで、外部にモノグサの理念と魅力を伝えるためには、現在の項目のリライトと新しい項目が必要だと提案しました。
また、良い成果物にするため、コピーライターの田村敦子氏に協力を依頼し伝わるBIを作成できるように努力しました。田村 敦子氏はクリエイティブディレクター‧コピーライターで、Dysonの日本でのブランディングや、Volkswagen、IKEA、JCB、POLA、UNITEDなどを担当された実績のある方です。
一度まとめたみんなの思いを再度定義する難しさ
旧Missionと「記憶を日常に。」というタグラインは、初期メンバーがさまざまな議論を重ねて、納得いく形でまとめたものです。それを入社したばかりの私がいきなり「検討し直しましょう!」と提案したので、当然疑問が返って来ることもありました。
とにかく言葉のチョイスが難しかったです。モノグサは頭脳派の方が多く、旧Missionの表現はかなり厳密な言葉遣いが多い印象で、抽象度も上がっている印象でした。結果、伝わりづらくなっていました。
田村さんの最初のリライトは、一度ボードメンバーの細川さんにヒアリングした上で書いたもので、私個人的にはとても分かりやすいものでした。
しかし、ボードメンバーからは「もう少し正確な言い方にしたい」と、表現に正確さを求められました。まだ見ぬ正解を求めてみんなが手探りをしており、田村さんも私も戸惑っていましたが、「ここで止まってはいけない!進むんだ!」と思っていました。
ブランディングは会社が人々にどのように感じさせたいか、そのためにどのように表現したいかが大切です。最終的にはボードメンバーの細川さんとコピーライターの田村さんで、直接Missionの添削のやりとりを何往復かして、ようやくみんなが納得する内容に辿り着きました。
第3編 Visual Identityのリニューアル
0からモノグサの可能性を考えることに挑戦! さまざまなパターンのロゴを提案
最初はVIを修正するのかリニューアルするのか、最終アウトプットをどうするべきか、どこまでやるべきか明確なゴールは決まっていませんでした。
ただ、BIをまとめるなかで私自身のモノグサへの理解が深まり、プロジェクト開始前に指摘された課題の改善の必要性を改めて感じていました。
これからMonoxerというサービスがあらゆる環境に展開していく前に他の可能性も示すべきと思い、ボードメンバーに伝えたところ、制作に賛成してくれました。そこで、今のロゴを修正する案に加え、0から考えた新しい案も提案しました。
また、より良いアウトプットになるように、6Dデザインのアートディレクター木住野彰悟氏にVIのリニューアルの監修を依頼しました。モノグサ社は、全く新しい案を提案してみることも、木住野さんにメンターになって頂くことも許可してくれました。これでようやくロゴのリニューアルが始まりました。
BIとの強い繋がりがあり、シンプルで覚えやすく、認識しやすいー時代の変化に耐えられるモダンな形を意識
旧ロゴをデザインしたのは社内Designerのmoyoさんでした。以下は旧ロゴ作成時の作成意図です。
moyoさんから旧ロゴのデータをもらったとき、とにかく細かいガイドラインに感心しました。何もかも綺麗に揃っていました。ロゴタイプをゼロから作るのは結構大工程です。これは大事に修正したい、責任が重いと感じました。
ロゴの修正でまず着目したのは一番伝えたいものが見えるような複雑度を減らしたシンプルさです。
左が旧ロゴ、右が検討時に作成した新ロゴ案です。ロゴマークの方はナマケモノの形を六角形に近づけ、頭周りの角度を無くした。ロゴタイプは読みやすさを重視し、六角形のモチーフをOだけに残し、他の書体は安定感のある癖のない形。色はユーザーが毎日触れる空気のようにさり気ない、居心地良いサービスになるように、青を明るくし背中の赤を除きました。
「シンプル」とは? ビジュアルの表現をロジックに伝えるためにブランド共通認識を探る
シンプルにするには、何か取り除かなければいけません。旧ロゴもmoyoさんが思いを込めて作ったものだったので、2人でなぜ「シンプル」にするべきか、「シンプル」は何を目指しているかを、何回も議論しました。
同じデザイナーでも、言葉や表現の解釈が違うことはよくあります。そこで、workshopの中で実施したモノグサの人格分析からキーワードをまとめ、モノグサのブランドがあるべき表現、ブランドの共通認識を探っていきました。
不思議なことに、共通認識を整理したことで過去のみんなの発言も思い出し、モノグサの「シンプルさ」の認識を揃えられました。
moyoさんはこの議論について、「シンプルという言葉は便利な反面、人によって定義が異なります。言葉の定義にツッコミを入れることはチームによっては火種になりうるので若干躊躇する気持ちもありましたが、将来デザインチームのメンバーが増えたときに『いや、よくわからないけどWangさんが言ったから赤無くしたんですよ...』と、無責任なことは言いたくありませんでした。議論を投げかけ、BIを絡めながら認識を合わせられたことで納得できましたし、自信を持って改善の意図を説明できる自信がつきました。」と話していました。
また、議論後にmoyoさんから「シンプルにするなら万年筆のモチーフも無くし、ナマケモノの尻尾もなくそう!」と提案があり、ナマケモノと六角形鉛筆にフォーカスすることになりました。いよいよロゴマークの最終調整が始まりました。
最後に私の方でロゴマークのバランスを調整し、木住野さんの監修でモノグサの新しいロゴが出来上がりました。
本プロジェクトを経て
今回、社内でリブランディングのプロジェクトをリードすることは私にとっても非常に特別な経験でした。一般的にリブランディングは社員の意見が交錯しまとまりにくいため、外部のデザイン専門会社にお願いすることも多いそうです。たしかに、プロジェクトが完成するまでボードメンバーたちにもいろいろな意見があり進捗が停滞する困難もありました。
しかし、それでもみんなが協力し合う精神が強く、お互いの専門を尊重しあいコミュニケーションを積極的に取ることによって、無事に社内でリブランディングを完成させることができました。
また、今回のリブランディングによって、当初の目的であるモノグサの素晴らしい理念をより分かりやすく、より良い形で、言葉でも視覚でも伝えることができました。Monoxerユーザーであるお客様からも好評で、モノグサへの理解を深めていただおり、本当に良かったと思っています!
今回のリブランディングを経て各種サイトもリニューアルしております!ぜひ、覗いてみてくださいね。