初心者が登山を楽しむために最もすべきことは、「暗記」である
初心者が登山を楽しむ上で最も重要なこと、それはとにかく山について「暗記」することである。
「意味がわからん」「もっと他にあるだろ」そんなツッコミが聞こえてきそうだが、私がそう考えるに至った一連の出来事を記事にまとめてみた。
なお、筆者の鵜飼は、普段はモノグサ株式会社で営業や事業開発をしつつ、最近趣味として登山を始めた者である。初心者の分際で生意気にもこのようなタイトルの記事を書かせて頂いたが、1~2分で読めるので暇つぶしがてらサクッとお読み頂けると幸いだ。
登山中に感じていた悩み
登山初心者が誰しも一度は思うこと。それは、「登山中、暇だな~〜」ではないだろうか。
私が山登りをする際には「日常のコンクリートジャングルから離れて山の景色を満喫したい」「登山仲間と共に過ごす時間を楽しみたい」そんな思いで友人らと山に向かう。現地に到着し、山を登り始めて最初の20〜30分は目的が達成されて上機嫌なのだが、その後は正直な話、段々飽きてくる。目当てだったはずの山の景色も徐々に全て同じように見えてくるし、友人との会話も疲れとともに口数が減っていく。すると、登山という過程にはもうすっかり飽きてしまい、ゴールである頂上にいち早く到着することばかりを望むようになってしまうのだ。真の登山愛好家からは叱られるだろうが、それが率直な思いだった。
そこで考えたことが、登山中の景色の変化を楽しめるようになれば、もっと山登り自体を満喫できるのではないかということだ。先ほど「自然の景色が同じようにしか見えないために飽きてくる」と述べたが、登山素人の私が「同じように」見えているだけであり、本来は山を一歩ずつ登るごとに異なる景色があるはずである。それに気づけさえすれば、より登山を楽しめるのではないか。そう考えた私は、山の景色の変化に気づくための方法を様々検討した際に、「山の景色そのものの知識が深まればその変化に敏感になれるのでは」と考え、「であれば手始めに山の中でもバラエティー豊かな花について詳しくなろう」と思い立った。
丁度同じタイミングで登山仲間の同僚から、群馬県の尾瀬ヶ原への登山(厳密にはトレッキングに近いが、分かりやすく登山に統一する)に誘われたため、待ってましたとばかりに尾瀬の花を事前学習することにした。
花を覚えるための取り組み
インターネットを探し回ると、ドンピシャにも尾瀬でよく見かける花についてまとめているウェブサイトを発見した。それがこの尾瀬マウンテンガイドというサイトなのだが、単に尾瀬で咲く花をまとめているだけでなく、「7月上旬の花」といった具合にかなり細かい粒度で季節ごとに咲く花をまとめてある。まさに探していた情報だった。
さらにありがたいことに、こちらのサイトでは大変丁寧に各花の詳細についての情報もまとめてあった。例えば、「レンゲツツジ」という花については、
といった具合に、各花に関する面白い周辺情報もまとまっている。完璧なサイトだ。私はこのサイトを師と仰ぎ、尾瀬登山にいく7月上旬までにその時期に咲く各花の名称と特徴を全て覚えることに決めた。当サイト上には7月上旬の花は全23種記載されているため、23個の名前と特徴を覚えるというわけだ。
この学習には記憶定着に特化したAI学習アプリ「Monoxer(モノグサ)」を用いた。これは覚えたいテキストや画像を登録すると、自動的に問題を生成し、学習者の記憶状況や忘却状況に応じて難易度や頻度を最適化して出題してくれるアプリだ。英単語等の学習に使われることが多いが、今回のように覚えたい情報さえまとめられればどんな内容でもアプリに登録することができる。詳しくは本記事の主題から外れるため割愛するが、気になる方はこちらのサービス紹介ページをご覧頂きたい。
(なお重ねてになるが、本記事の筆者はMonoxerを開発運営するモノグサ株式会社の人間であるため、ステマにならぬようここに明記しておく。本記事の目的は登山における暗記の効用を説くことであり、Monoxerを売り込むことではないため、悪しからず)
Monoxerを使い2週間ほどで花情報の暗記を済ませ、当日を迎えた。尾瀬には同僚の登山仲間5人と向かったが、一部メンバーを除き今回私が事前学習をしたことは伏せておいた。知識を得た私に対して彼(女)らがどんな反応をするのかを見たかったためだ。
いよいよ登山へ!
いざ山を登りだすと、自分の視点がいつもと違うことに気が付く。普段は前方をただぼんやりと眺めて山を登るのだが、その日は異様にキョロキョロと視線が泳ぐ。もちろん、事前に学習した花を探しているのだ。そして登山開始からものの10分で白い変わった花が咲いていることに気が付いた。私は真っ先に「ギンリョウソウだ!」と声を上げ、続けて「この花は『腐生植物』といって葉緑素を持たないんですよね。光合成ができないから、菌類から栄養をもらって生きてるんですよ。」と、したり顔で同僚に解説する。同僚たちの驚きを浮かべた表情が堪らない。
同僚は皆優しく、急にドヤ顔知識披露おじさんと化した私を疎んじるでもなく、むしろ一緒になって楽しんでくれた。今になって考えれば、そんな心優しい同僚には感謝しかない。(もし私が同僚の立場だったら、前までは黙々と登山をしていた奴が急に花のさかなクンみたいになったのを見たら、思い切り訝しんで今後の付き合いを考え直すと思う)
そんな同僚の助けもありその後も続々と花を見つけることができ、気持ちは某通信教育の漫画に出てくる、勉強したところがことごとくテストで出てきて喜びを隠せない主人公のようだ。
いつもなら途中から暇で仕方がない登山だが、その日は常に「ウォーリーをさがせ!」の如く、移り行く景色をじっと観察し続け、花を見つける度に同僚とその花についての豆知識を皮切りに会話が弾んでいく。例えば、ミツガシワを見つけた際には、この花が氷河期から生き残っている花であることから、皆で悠久の時の流れに思いを馳せ、カキツバタを見つけた際には、高校古文で学習した「伊勢物語」をきっかけに学生時代の思い出話に花を咲かせていく。(私は事前学習をするまで完全に忘れていたが、在原業平が詠んだ「唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ」という歌が各句の頭文字を取ってカキツバタとなっている)
また、途中ですれ違ったご年配の登山者グループから「この花綺麗だね〜。何て花だろう。」という会話が聞こえてきた際には、すかさず「これはタテヤマリンドウですよ! お天気花なので雨が降ると蕾のまま開いてくれないので、今日見られてラッキーですねー!」と遂には他の登山者とも花をきっかけに話をするようになった。(登山をする方は皆大らかなので、このご年配の方々も皆笑顔でご返事くださった。決して変な奴に絡まれたと警戒されてなどなかったのでご安心を)
登山の感想とまとめ
そんな形で計丸二日の尾瀬登山という名の花探しはあっという間に終わりを迎え、そして私は気が付いた。元々の登山の困りごとだった「山の景色が徐々に全て同じように見えてくるし、友人との会話も疲れとともに口数が減っていく」悩みがいつの間にかすべて解決していたのだ。そして思い返せば、今回は最初から最後まで心の底から登山を楽しむことができていた。
本記事を通して私の「初心者が登山を楽しむ上で最も重要なことは、とにかく山について暗記することである」という主張が過言ではないことが少しでも伝わったなら幸いである。皆様の中にも登山は好きだが道中の退屈さでお悩みの方がいれば、ぜひ一度暗記をお試しされてはいかがだろうか。まずは取っつきやすい花の暗記をおすすめする。きっと、登山がもっと楽しくなること請け合いだ。
あとがき
最終的に、この尾瀬登山では事前に学習した23種中15種もの花を見つけることができた。打率として6割5分。イチローも真っ青の超アベレージヒッターだ。今回の暗記にあたり、効率的に花の情報を収集することができたのは、的確な情報をまとめてくださった「尾瀬マウンテンガイド」のお陰である。大変僭越ながらこの場を借りて心よりお礼を申し上げたい。尾瀬マウンテンガイドの運営者様、誠にありがとうございました。
終わり
モノグサ株式会社では一緒に働く仲間を募集しています。
少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひお話しましょう!