一人法務を卒業した筆者による一人法務の振り返り【一人法務卒業への道】
こんにちは。モノグサ株式会社で法務を担当している良知と申します。今回は第3回として、当社に一人目法務として入社し、一人法務からの卒業を果たした時の振り返りをしていきたいと思います。
なぜ一人法務からの脱出を考えたのか
入社から1年と少し経った2023年10月頃から、徐々に業務に余裕をもって取り組めなくなり、増員を考え始めました。徐々に余裕がなくなってきたのは主に以下の4つになります。
その1:純粋に相談件数が増えた
当社に入社した際、法務がいなかったこともあり、1カ月当たりの法務相談数は20件弱でした。それが、社内研修や案件掘り起こしをした結果、一人法務からの卒業を考え始めた1年経過後には30件超と1.5倍以上に増えてきました。
その2:新規ビジネスなど複雑な相談の割合が増えた
顧客属性の増加(学校・塾に加え、一般企業や自治体が新たな顧客に)、新たな商流の追加に伴って、新規の契約書面や利用規約の作成、セキュリティや個人情報保護法への対応など、非定型業務=難易度が高いご相談の割合が増えた分、業務の増加割合以上に時間が取られるようになってきました。
その3:調整業務に要する時間が増えた
社員の人数が増えてくるにつれ、情報の格差が大きくなります。その点法務は、様々な部門から多種多様な相談を受けるので、社内では多くの情報を受け取れる立場にあると思います。
それを活かして、部門の間に落ちた仕事を拾う、情報にギャップがある際にサポートに入ったりすることで、一定時間が取られるようになりました。
その4:社内体制整備の時間が増えた
当社もまた、上場に向けた準備を行っています。
上場に向けて、取締役会の設置、会議体運営、各種規定の整備などの業務が相談案件とは別途発生してくるようになってきました。
さらに、社内体制が整備されてくると、その体制を維持するための運用コストも発生してきます。例えば、取締役会設置会社になると、取締役会の招集通知や取締役会議事録の作成が必要になったり、コンプライアンス規程を整備すると、コンプライアンス委員会を運営する必要が出てきたり、といったものです。
いままで4つ一人法務からの卒業を考えた理由を書いてきましたが、この4つ目が卒業が必要だと考えた最大の理由かなと思います。というのも、この運用コストは外注などで軽減することが難しく、社内体制を整備すればするほど運用コストが増えてくるからです。
一人法務からの卒業方法とは
業務量が増え、さすがに一人法務では厳しい、、、となった際、どのように卒業を果たしたのかをまとめようと思います。
その1:業務の状況を上長に率直に伝える
当たり前でしょ?と思われるかもしれませんが、一人法務で上手く業務が処理できていればいるほど、さらに法務経験者が社内にいない場合は特に、人手が足りなくなりつつあるということに気が付いてもらいにくくなります。
ですので、1on1などで業務の状況を上長に率直に伝え、X年X月までにはメンバーを採用したいので、採用枠を確保してほしいとお願いしておきましょう。
その2:人事に事前に相談しておく
採用枠が確保されてからではなく、上長に採用枠確保をお願いし始めた段階から、人事ともコミュニケーションを取っておくことをお勧めします。
というのも、採用枠が確保できた後、採用したい人材の条件などを人事と話して決めていくと、実際の採用開始までブランクができてしまうからです。
(そのX:リファラルできそうな元同僚がいたら声をかける)
これは中々できる人がいないと思うので、もし該当すればではありますが、もし元同僚で探しているポジションに合致する人がいた場合、ぜひリファラルしてみることをお勧めします。
採用の一番難しいところは、面接だけで候補者の人柄をできるだけ正しく理解しなければならないことです。加えて、理解を間違えた場合、自分に与える影響も絶大です。
なので、もし元同僚がポジションに合致している場合は、積極的に声をかけてみることをお勧めします。
その3:面接のお作法を確認する
スタートアップは特に、人財の獲得が会社の成長に必須となるため、採用ピッチ資料を用意してくれています。
まずはそれを入手し、その資料をどう候補者の方に説明するかロールプレイしておきましょう。私の場合、一人オンラインミーティングツールをつないで、画面に向かって説明をし、上手く説明できないところは言い方を工夫する、間延びしてしまうところは説明の方法を変えてみるなどといったことを面接前に繰り返していました。
これは、単純かつ個人的にはかなり精神的負担も大きい(振り返りの際に、自分のつたない面接動画を見るのがつらい。。。)業務ではありましたが、面接時にスムーズに会社への興味を高めることができ、面接の場が和やかになっていたので皆さんもぜひ試してみてください。
その4:面接!
このころには、人事からこの人と面接してみませんかとご案内いただけるようになっていると思います。
私の場合、採用の条件にある程度当てはまっている方とはカジュアル面談を組んでいただくようにしていました。何度も面談をしていると、採用ピッチ資料の説明方法、候補者の方に確認するべき質問、候補者の方からの質問への回答、いずれもどんどんブラッシュアップされ良くなってきます(おそらく皆さんも良くなっていくことが実感できると思います)。
面接をしていると本当に実感するのですが、ポジションに合致しかつ会社の社風と合う方に出会える可能性はかなり低いです。その低い確率の中、この人を採用したい!という人に出会った時に、スムーズに面接をリードし、会社の良さを理解してもらうには面接の場数を踏んでおく以上の対策はないと思います。なので、業務をしつつ面接をするのはとても大変だとは思いますが、なるべく多くの候補者の方と会うことをお勧めします。
また、面談が上手く行った場合の面談の流れや、各設問にどのくらい時間を使ったかは面談後メモしておき、次回の面談に活用するとさらに面談のレベルアップ速度を上げられると思います。
その5:申し送りは丁寧に
多くの方は、ご自身が候補者を面接したあと、さらに上長に面接してもらうことになると思います。
その際の上長の申し送りはなるべく丁寧に対応することをお勧めします。
私の場合、面談時の資料を見直したところ、主に良かった点、懸念点、上司に深掘りしてほしいポイントなどを3点から多い人で5点ほど申し送りしていました。
特にこの方とは一緒に働きたいと思った方については、思いが伝わるように特に熱く申し送りしておくと結果につながる可能性が高められると思います。
その6:折れないへこたれない諦めない
自分も上長も高評価だった場合、いよいよ内定を出すという話になります。ただ、内定を出す=採用が決まるわけでは残念ながらありません。自分が一緒に仕事をしたい人は多くの場合、他の人にとっても一緒に仕事をしたい人でもあります。
多くの場合、そのような素敵な人は、複数の会社から内定をもらい、その中から自社を選んでもらう必要が出てきます。
もちろん、選んでもらうためにアトラクト面接を頑張る、条件交渉をするなど最大限頑張りますが、それでも他社を選ばれてしまう場合はどうしても発生します。そうなって しまったら、正直凹みますし、その方が素敵な人であればあるほどショックも大きいと思います。
正直、自分もショックを受けたこともあるので、難しいのはとても分かるのですが、採用しなければ一人法務から卒業できないので、良い人から内定を承諾してもらえるまで、折れず、へこたれず、諦めず頑張ってほしいと思います。
まとめ
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
当社は、無事に2024年8月に一人法務体制から卒業することができました。
採用活動はとても大変なものではありましたが、素敵な方が同僚となってくれたことで、法務組織としてできることは大きく広がりましたし、気軽に相談できる環境はとても良いものだと改めて思います。
一人法務を目指した皆さんが、素敵な一人法務ライフを満喫できること、その後一人法務を卒業できることを願って筆をおきたいと思います。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。