【モノグサPdMシリーズ vol.11】PdMと認知バイアス
こんにちは、モノグサ株式会社でプロダクトマネージャー(以下PdM)として働いているマチューです。この記事は、モノグサのPdMの仕事を紹介するシリーズの中での最新版であり、自分が書く2つ目の記事となります(前回はシリーズのVol.5で英語四技能のプロダクトを紹介させていたきました。)
今回は、PdMにとっての認知バイアスについて、そしてモノグサでの日常業務においてPdMがどのように認知バイアスに対処できるかをお話しします。
まず、「認知バイアス」とは何か?
ウィキペディアによれば、「認知バイアス」とは、判断が合理性から逸脱するパターン体系の一つです。簡単に言えば、誤認や判断の誤りです。
1972年の研究論文で初めて認知バイアスが取り上げられて以来、認知バイアスに関する研究や論文は数多くあり、さまざまなバイアスの種類が存在していること、又はバイアスが私たちの日常的な判断にどのような影響を与えるのかが明らかにされてきました。
以下にPdMが遭遇する可能性のあるバイアスをいくつか紹介します:
確証バイアス:最も広範で影響力のあるバイアスの一つである。確証バイアスとは、自分の既存の信念や意見に沿った形で新しい情報を求める傾向のことである。また、自分の世界観に沿うように、異なる視点から情報を歪めたり解釈したりする傾向もある。
アヴェイラビィリティバイアス:交通事故に遭ったことのある友人がいれば、交通安全に関心を持ちやすい。マラソンを走れる喫煙者の友人がいれば、喫煙が危険だと思う可能性は低くなる。私たちの脳は、すぐに手に入る情報に頼りやすいため、手に入る事例に基づいて現実を作り上げてしまうのだ。
バンドワゴン効果:みんながやっているからという理由で何かをする傾向。
認知バイアスとプロダクトマネージメント
認知バイアスによって、プロダクトのリサーチ、設計、又はイテレーションに誤った決定や判断につながるリスクがあり、PdMが最も注意すべきことであると思われます。
PdMとして、次のような経験をしたことはないでしょうか?
ユーザーテストを運用した後、同意できないデータを「外れ値」として却下する傾向(確証バイアス)
既存ユーザーとその要求に過度に注目し、ポテンシャルユーザ又はチャーンしたユーザによる情報を見落とす傾向。(アヴェイラビィリティバイアス)。
他の製品がやっているからという理由で機能を実装したり、ユーザーの利益よりも利害関係者との合意形成を優先したりする傾向がある(バンドワゴン効果)
このように、PdMは毎日認知バイアスと戦っています。
モノグサは、プロダクトが記憶プラットフォームであり、様々なユーザー(学習者、管理者、保護者など)に利用していただいています。 一人ひとりに個性があるように、記憶に対して抱えている課題も千差万別です。利用者の課題を深く理解し、その課題を解決してあげるプロダクトをとどけてあげるのがモノグサのPdMのミッションであるため、バイアスを克服することが最も重要と思われます。
さて、モノグサでPdMはどのように認知バイアスと向き合っているのか?
まず第一に、一般的にバイアスに対処するための魔法の方法は存在しません。バイアスに対処することは、ほとんどの場合、個人個人が向き合うべき問題であり、多くの厳しさと絶え間ない自問自答が必要です。一方、PdMがバイアスを克服するためには、環境も一役買うと思われ、モノグサのいいところを教えます。
① 会社全体でオープンに会話できる
モノグサは、「記憶を日常に。」をすべての人のために実現することをミッションとして、 社内で共有する価値観と行動指針を定義されています。その一つが「無意識のバイアスを自覚する」です。モノグサは、記憶(認知科学の領域)の会社として、誰でもが無意識のバイアスにさらされていることを認め、それを自覚し、克服するように行動しなければならないと考えられています。
「無意識のバイアスを自覚する」ことによってモノグサの社員は様々なバックグラウンド、意見を持った人と協調することを大事にしたり、前提情報や文脈を適切に共有しながら議論を進めていくことを大事にしたりなど、組織・役職関係なくオープンにディスカションができます。セールス、CS、サポート、リーガル、PR、エンジニアやデザイナーの多数のステークホルダーと日常的に関わるモノグサのPdMはこのように色々な視点での議論ができ、自分の思い込みを見直す機会が沢山あります。
こうしたオープン・ディスカッションの一例は、四半期ごとに開催される 「プランニング 」ミーティングです。全社員(ビジネス、プロダクト、コーポレート)が招待されるこのミーティングでは、誰でも課題を提起することができます。ピックされた課題について、意見、背景、洞察が共有され、オープンにPdMと議論されます。
② 直接ユーザの声が聞ける
最近、Monoxerで日本語「スピーキング」機能のメジャーアップデートをリリースしました。この開発は、英語での機能のアップデートのリリースに続いて行われ、英語の「スピーキング」機能では音素のトランスクリプトが含まれていました。音素は日本語APIに未対応であり、他のサービスなどにもなかったので、発音のトランスクリプト自体は日本語学習に不要だと思い込んでいました。しかし、Monoxerを使用している日本語学校の先生の会合に出席する機会があり、そのインタビューを通して、日本語のアクセントを教えるのがとても重要であることを知り、自分のバイアスに気づくことができました!
このように、バイアスを克服する一つの方法は、ユーザーや顧客の声を直接聞くことです。モノグサでは、PdMがユーザーの声を聞く機会が多くあります。もちろん、日常的に顧客と接するビジネスチーム(営業、CS、サポート)のメンバーが主なチャネルですが、直接顧客に会いに行くことも可能ですし、エンドユーザー(Monoxerのアプリケーションを使用する学習者)にインタビューしたり、Monoxerが使用されている現場を見学することもできます。
モノグサでは、CSや営業がプロダクト開発グループのメンバー(エンジニア、PdM、デザイナーなど)を招待して、お客様とのミーティングに参加することもあります。このようなミーティングは、顧客の問題やニーズを直接聞き、製品をどのように改善すればより良いサービスを提供できるかを議論する絶好の機会です。
③ データに頼れる
データドリーブンの意思決定は、認知バイアスを克服するもう一つの方法です。モノグサのデータチームは、開発部門外のメンバーも含め、会社の全メンバーがデータにアクセスできるように継続的に取り組んでくれています。モノグサのPdMはデータへのアクセスや分析を実行するために他のSWEに過度に依存することなく、自分でSQLクエリをコーディングすることが一般的です。最近では、訓練されたchatGPTのモデルを使用して、クエリを書いたり、デバッグしたり、あるいは他のメンバーが書いたクエリを解釈することさえ可能です。そしてもちろん、質問があったり、ちょっと複雑なクエリーを作るのにサポートが必要なときはいつでも、エンジニアのみなさんがすぐに助けに来てくれます!
データに頼ったからといって、すべてのバイアスが取り除かれるわけではありません。それどころか、テストや結果の解釈の仕方によっては、バイアスが生じる可能性もあります。一つの例として、最近、学習者のエンゲージメントを高めることを目的とした新機能のA/Bテストを行いました。テストは1週間実施され、結果は非常にポジティブでした(つまり、処理グループの結果がコントロールグループの結果をはるかに上回ったということです)。その代わり、処理グループがパワーユーザーによって偏っていたりする可能性のデータのバイアスを疑い(A/Bテストを行う時によく発生してしまうバイアス)、テストの延長、そして再チェックを進めました。最終的に処理グループにはそのようなバイアスは見られず、テストは成功したと結論づけることができました!
結論
これでモノクサにおいてPdMがバイアスにどう対処しているかを紹介し、PdMシリーズの11回目を迎えました。
これまでもProduct Manager陣が弊社プロダクトの開発やそのプロセス、役割などについて発信しておりますので、過去記事が気になる方はこちらにもお立ち寄りくださいませ。